2018年8月 5日 (日)

北村英哉・唐沢穣 偏見や差別はなぜ起こる?

ヘイトスピーチや障害者殺傷事件から、LGBTをめぐる問題まで、私たちの日常生活には、多様な偏見・差別が存在します。本書は、こうした偏見・差別の仕組みを心理学理論から読み解き、さまざまな集団・社会的カテゴリーにかんする偏見・差別の実態を分析しています。
  1. ステレオタイプと社会的アイデンティティ
  2. 公正とシステム正当化
  3. 偏見・差別をめぐる政治性
  4. 集団間情動とその淵源
  5. 偏見の低減と解消
  6. 人種・民族
  7. 移民
  8. 障害
  9. ジェンダー
  10. セクシュアリティ
  11. リスク・原発
  12. 高齢者
  13. 犯罪
 ジェンダーやセクシャリティの議論は、社会学関連の授業で考えたことがある学生も多いでしょう。また外国人労働者をめぐる移民に関しては、社会学概論などでも取り上げたので、偏見・差別といった認知・感情をめぐる心理学の視点からも考えてみましょう。
 あまり授業では取り上げないのですが、私のエイジズム(年齢差別)の論文も、第12章「高齢者」でとりあげられています。心理学×社会学を学ぶ人間社会学科の学生にとくにおすすめの一冊です。

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2018年7月12日 (木)

貴戸理恵 「コミュ障」の社会学

 学生の自己紹介で「コミュニケーション能力を身につけたい」という表現をよく耳にします。また、懇親会の席などでも、あの子は「コミュ力」が高い、あるいは「私はコミュ障だから…」という会話も耳にします。本書は、こうした学校を支配する「コミュニケーション至上主義」の背景を明らかにする一冊です。
  1. 若者の対人関係における「コミュ障」
  2. 「生きづらさ」の増殖をどう考えるか
  3. リスク社会と不登校
  4. 「生きづらい私」とつながる「生きづらい誰か」
  5. 「学校」の問い直しから「社会」とのかかわりの再考へ
  6. 支援者と当事者のあいだ
  7. 不登校の子どもの「居場所」を運営する人びと
  8. 「働かないことが苦しい」という「豊かさ」をめぐって
  9. 「自己」が生まれる場
  10. 不登校からみる共同性の意義
  11. 「書くこと」のススメ
  12. 「当事者」に向き合う「私」とは何か
  13. 家族とコミュニケーション
  14. 「学校不適応でも大丈夫」と言いつづけるために
 いじめ、不登校、ひきこもり問題といった若者の「生きづらさ」をどう考えるか、その歴史的背景から、「当事者」とは誰かといった論点まで、自己/コミュニケーションの社会学を知りたい学生におすすめの一冊です。

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2018年1月31日 (水)

南後由和 ひとり空間の都市論

 都市の「ひとり空間」を社会学×建築学の視点から分析した新書です。具体的な飲食店や宿泊施設のケース・スタディとともに、都市社会学やメディア論の古典も上手に散りばめられている一冊です。
  • 『孤独のグルメ』の都市論
  • ひとり・ひとり空間・都市
  • 住まい――単身者とモビリティ
  • 飲食店・宿泊施設――日本的都市風景
  • モバイル・メディア――ウォークマンからスマートフォンまで
  • 都市の「ひとり空間」の行方
 「そもそも孤独と自由が背中合わせの都市生活では、「ひとり」でいることこそ、歴史的にも<正常>だったはずだ。今日ではさらに、「ひとり」が存在する空間は、モバイル・メディアの普及を受けて増殖し、新しい形態へと進化を遂げつつある。その新しい特性とは何か。「みんな・絆・コミュニティ」へと世論が傾くいま、ひとり空間の元凶と可能性を、いまいちど問い直す」(扉文)
 
 半個室型ラーメン店や、ひとりカラオケ店など、「都市フィールドワーク」や「地域社会学」のレポートで取り上げられるトピックも満載です。心理×社会×メディアを学ぶ人間社会学科の皆さんにお薦めの一冊です。

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2017年11月30日 (木)

長谷川眞理子・山岸俊男 きずなと思いやりが日本をダメにする

副題は「最新進化学が解き明かす『心と社会』」です。
進化生物学者と社会心理学者の「対話形式」の本なので、とても読みやすいです。
  1. 「心がけ」「お説教」では社会は変わらない
  2. サバンナが産み出した「心」
  3. 「協力する脳」の秘密
  4. 「空気」と「いじめ」を研究する
  5. なぜヒトは差別するのか
  6. 日本人は変われるのか
  7. きずなや思いやりが日本をダメにする
 多岐にわたるトピックが取り上げられていますが、すべての内容に共通する軸の一つは「進化で作られた人間の性質を出発点にする(p.290)」という理解です。そしてもう一つの軸は「ヒトは社会システムの中で動いている(p.292)」という認識です。
 「予言の自己実現」や「ピグマリオン効果」など、授業で取り上げた内容も扱われています。とくに、レポートなどで、何でも「こころ」の問題にしてしまいがちな学生におすすめの一冊です。

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2017年9月19日 (火)

大月敏雄 町を住みこなす

 建築計画学を専門とする著者の新書ですが、家族から地域の話題まで、「超高齢社会の居場所づくり」のユニークな事例がたくさん紹介されています。
 「『時間』『家族』『引越し』『居場所』という、4つの観点から、住まいから町までの住みこなしの減少をひも解き、さらに最終章で、それらの観点を踏まえた形で、個人レベルから町レベル、地域行政レベルまでも関与できる、町のつくり変えのための実践のヒントを示す(p.240)」構成になっています。
  1. 時間:人生のスパンで住宅を考える
  2. 家族:十家族十色の暮らし方
  3. 引越し:「Gターン」がつくる生活の薬箱
  4. 居場所:町のあちこちに主感のある場を
  5. 町を居場所にするために:居場所で住まいと町をつなぐ
 私自身も、老親と子どもの「近居」や、住み心地満足度などの調査を実施してきたので、著者の切り口にとても共感できました。地域社会学や社会学概論でとりあげた、郊外化/ニュータウンの歴史や、震災後の孤独死問題など、さまざまな議論とつながる一冊です。

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2017年7月 2日 (日)

小池高史 「団地族」のいま

 団地は、本書の序言でも指摘されているように、「限界集落」や「孤独死」などのマイナスイメージで語られることが多い。しかし、その一方で団地を被写体にした写真集が脚光を集めたり、さまざまな「リノベーション」事業が展開されています。本書は、高齢者・孤立・自治会をキーワードに団地族の変容と再生の途をさぐっています。

  1. 団地に暮らす高齢者
  2. 「団地族」と「団地高齢者」
  3. 地域のなかの団地高齢者:埼玉県和光市
  4. 独居高齢者の居場所と団地内の知り合い:公田町団地
  5. 団地自治会:神代団地
  6. 団地内メディア:自治会報・高島平新聞
  7. 高齢社会の象徴としての団地

 「社会学概論」や「地域社会学」の参考文献としてお薦めです。また社会老年学といった分野に関心がある学生にも読んでほしい一冊です。

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2017年5月 2日 (火)

石井研士 渋谷学

 本書のタイトルである「渋谷学」は國學院大學が始めた学際的な地域研究です。「渋谷学」の成果は、叢書として5冊が刊行されていますが、本書は渋谷の過去・現在・未来を知るのに最適です。

  1. 生まれ変わる<シブヤ>
  2. スクランブル交差点という祝祭
  3. <シブヤ>はどこにあるのか?
  4. 渋谷の地理、渋谷の歴史
  5. 渋谷の光と闇

 本書を読んでから、渋谷の街に飛び出すと、いつも見ていた景色が少し違って見えるかもしれません。「都市フィールドワーク」や「地域社会学」を履修している学生にお勧めの一冊です。宗教学を専門とする著者独自の切り口も垣間見られます。

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2017年1月27日 (金)

原田謙 社会的ネットワークと幸福感

勁草書房から単著を出版しました。帯には「「つながり」を増やすべきか、「しがらみ」を減らすべきか? 都市とエイジングの社会学の視角から、現代日本の人間関係を読み解く」と書きました。

  1. 人間関係をとらえる概念
  2. 人間関係を読み解く理論
  3. 都市住民の親族・隣人・友人関係は衰退しているのか?
  4. 階層的地位は、親族・隣人・友人関係の格差をうみだすのか?
  5. サポートを増やすべきか、否定的相互作用を減らすべきか?
  6. ソーシャル・キャピタルの高さは満足度を高めるのか?
  7. 孤独なのは誰か、孤独は不幸をもたらすのか?
  8. 重要なのは親族なのか、友人なのか?

 章ごとに設定したリサーチ・クエスションを、「30自治体調査」「未婚者調査」「後期高齢者調査」のデータを用いて計量分析によって検証しました。社会調査士の取得を目指している学生はぜひ読んでください。また生活満足度やメンタルヘルスと指標とした「幸福感」と人間関係の関連を主題にしているので、社会学だけでなく心理学に関心をもっている学生にも読んでもらいたいです。

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2016年12月19日 (月)

山田昌弘 モテる構造

 男らしさ/女らしさといったジェンダーをめぐる議論は、少々堅苦しくなりがちです。本書は「できる男性はモテる」けれでも「女性はできることと、モテることは別」という構造にとことんこだわった一冊です。

  1. 男と女の関係学
  2. 男らしさ・女らしさとは何か?
  3. 性別規範の機能:社会にどのように利用されているか
  4. 性差別の背景:できる女はモテないか?
  5. 近代社会の構造転換:男女の生き難さの変貌
  6. ジェンダーの発達理論
  7. ケアは女の役割か:男が触ると「いらやしい」?

 近代社会におけるジェンダーに関する規範の特徴の一つとして、女性は公的世界(たとえば仕事)で「できる」ことと男性から恋愛対象として選ばれやすい(モテる)ことは別次元であるという「非対称性」が指摘されています。この身も蓋もない現実を、社会的/心理的構造からじっくり考えてみたい学生におすすめです。

 

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2016年9月19日 (月)

中室牧子 「学力」の経済学

 本書のメッセージは「どこかの誰かの成功体験や主観に基づく逸話ではなく、科学的根拠に基づく教育を」です。子育てをめぐっては「ご褒美で釣ってはいけない」「褒め育てはしたほうがよい」「ゲームをすると暴力的になる」と言った見解があります。しかし筆者は、エビデンス(科学的根拠)がこうした見解を支持しないことを指摘しています。

  1. 他人の「成功体験」はわが子にも活かせるのか?:データは個人の経験に勝る
  2. 子どもを「ご褒美」で釣ってはいけないのか?:科学的根拠に基づく子育て
  3. 「勉強」は本当にそんなに大切なのか?:人生の成功に重要な非認知的能力
  4. 「少人数学級」には効果があるのか?:科学的根拠なき日本の教育政策
  5. 「いい先生」とはどんな先生なのか?:日本の教育に欠けている教員の「質」という概念

 さまざまなデータが、細かい数字なしで、簡潔な表やグラフで示されています。教育や経済に関心がなくても「データ」で語ることの重要性を理解するのに最適な一冊です。

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